米国雇用統計

パッとわかる!米9月雇用統計のポイント

  • 対前年比時間給賃金が前月に続きインフレ加速を予兆させる結果か
  • ドル/円は114円台回復に向け一段高に向かう契機となるか
  • 米中を中心にした貿易問題の労働市場への影響が見られるか
4月 5月 6月 7月 8月 9月
非農業部門 就業者数(万人) +17.5 +26.8 +20.8 +14.7 +20.1 +18.8
失業率(%) 3.9 3.8 4.0 3.9 3.9 3.8
時間給賃金 前月比 +0.1% +0.3% +0.1% +0.3% +0.4% +0.3%
時間給賃金 前年比 +2.6% +2.7% +2.7% +2.7% +2.9% +2.8%

米9月雇用統計 注目点

  • ①先週のFOMCでは予想通り、今年3度目となる0.25%の利上げを決定したほか、声明文から『金融政策スタンスは緩和的』との文言が削除されました。しかし政策金利見通しでは年内1回、来年3回の利上げを示唆するなど、依然緩和的であるからこそ利上げ継続という一見矛盾する内容となりました。
    こうした中で対前年比時間給賃金が前月(+2.9%)から鈍化すると予想(+2.8%)されていますが、予想を上回った場合、12月FOMCで来年4回の利上げ回数への変更やターミナルレート(利上げサイクルの最終地点:3.0%)の上方修正への思惑を高める可能性もあるだけに注目されます。
    2018年9月 2018年12月 2019年3月 2019年6月 2019年9月
    FRBの政策金利誘導目標(%) 2.00~2.25 2.25~2.50 2.50~2.75 2.75~3.00 3.00~3.25
  • ②ドル/円は先週28日に113円71銭まで上昇し年初来高値を更新しました。
    113円台後半に観測されると見られるまとまったドル売りをこなすことになれば114円台回復も視野に入る可能性があるだけに、雇用統計に対する米長期金利が先週付けた3.11%台を上回るか注目されます。 米長期金利の上昇に伴いドル買いが優勢となればドル/円の一段高につながる可能性もあるだけに注目されます。
  • ③米中を中心にした貿易問題が燻る中、先週24日には新たに中国からの輸入品2,000億ドル相当に制裁関税を発動、中国も米国からの輸入品600億ドルに制裁関税を発動しました。こうした米中間を中心にした貿易問題が製造業を中心にした雇用に影響を及ぼしているのか注目されます。
  • ④パウエルFRB議長は「緩やかな利上げが持続的な強い経済を支援」「インフレは低く安定、経済は強い」と発言し、8月下旬の「米国経済が過熱している兆候はない」との発言と比べ、インフレ上昇を懸念し始めているようにも思われます。
    ほぼ完全雇用の状況と低失業率の下、消費者信頼感指数の上昇や減税効果などによりインフレを未然に予防するための利上げ継続スタンスが維持されたとの今回のFOMCの結果を踏まえ、失業率の低下傾向をあらためて確認することになれば、インフレ期待の上昇につながるだけに年内2回および来年のFOMCでの金融政策が『正常化』から『引締め』への変更につながるだけに注目されます。
グラフ:米非農業部門就業者数(万人)、失業率(%)(出所:米労働省)

8月雇用統計のポイント

  • 就業者数は予想を上回った一方、7月、6月は下方修正、3ヵ月平均も18.5万人へ減少
  • 失業率は2ヵ月連続で3.9%、労働参加率(62.7%)と前月(62.9%)から低下
  • 対前年比の時間給賃金は2.9%と2009年6月以来の高水準となりインフレの兆候も
  • 製造業の就業者数は0.3万人減、前月分の速報値3.7万人増から1.8万人増へ下方修正
  • 9月FOMC利上げ観測を織り込むと同時にインフレ指標次第では12月再利上げも

米8月の雇用統計では、時間給賃金(前年比)は7月まで3ヵ月連続で+2.7%増と緩やかなペースでの上昇を継続していたものの、8月に2.9%まで上昇したことで企業の利益率圧迫や、FRBによる想定以上の利上げペースを招く「賃上げ本番」につながるか注目されます。これまでも長らく、労働市場に明確なスラック(需給の緩み)の兆しはほとんど見られていませんでした。失業率は数十年ぶりの水準へ改善が進む一方、求人数は失業者を上回る水準に到達するなど企業経営者から、人材の確保が難しいとの声が漏れていました。しかし、賃金上昇率の伸びは緩やかな状況が続いていたことからエコノミストの一部からは、依然として未活用の隠れた労働力が存在し、拡大する雇用主の人材需要を満たしているとの認識が一般的となっていましたが、8月の雇用統計で時間給賃金の上昇によってこうした見方を修正せざるを得ない状況が生まれた可能性が生じることとなりました。

さらに8月の労働参加率は62.9%から62.7%に低下したということは賃上げペースが加速しているにもかからず、労働人口が減少していることを示唆しています。すなわち、企業が労働市場を去った人々を呼び戻す、またはライバル社から人材を引き抜きたい場合には、給与を引き上げざるを得ないということになります。さらに米4-6月期GDP確報値では成長率が+4.2%となり、企業の設備投資の堅調さも確認されたことから企業は今後さらに雇用を増やす必要があると思われます。過去数年に渡る設備投資低迷が招いた生産性の伸び悩みを踏まえると、需要に追いつくにはおそらく増員で対応するしかなく、米国の減税や財政支出などを追い風に力強い成長を続けるとすれば今後も堅調な労働市場が続くと予想される中で、賃金上昇が一段と本格化するかもしれないとの状況を予見される結果となりました。

8月の雇用統計を前後したドル/円の動き

提供:SBIリクイディティ・マーケット株式会社

お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。
本レポートに表示されている事項は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。

住信SBIネット銀行の外貨取引はこちらから

米国雇用統計とは?

米国の労働省が毎月発表する経済統計のひとつです。失業率や非農業部門就業者数、週当たり平均賃金など労働市場の情勢を見る十数項目のデータが盛り込まれています。米国の景気動向を測る上で最も重要な指標で、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策決定に影響を与えます。

雇用情勢の変化は個人所得や個人消費などに波及するので、為替市場や株式市場の材料となります。発表前からマーケット参加者に注目される度合いが高く、通信社などによるエコノミスト調査の予想値に基づいて相場が動くこともあります。

ご注意事項

※本ページに掲載されている情報(以下「本情報」)の著作権を含む一切の権利は、SBIリクイディティ・マーケット株式会社に帰属します。本情報を無断で使用(複製、蓄積、翻訳、翻案、引用、転載、転送、改変、頒布、販売、出版、放送、公衆送信(送信可能化を含む)、伝達、口述、展示)等することを禁じます。本情報の提供について信頼性の維持には最大限努力しておりますが、本情報は、ページ更新時点での情報であり、その正確性、完全性、最新性等内容を保証するものではありません。本情報は、自らの判断と責任において使用してください。本情報を使用した結果、損失・損害を被ったとしても、当社および情報提供会社は一切の責任を負いません。